【シリーズ高校バスケ VOL.2】2010年代から現在までの高校バスケをおさらい

前回に引き続き、日本の高校バスケの魅力を伝えたい!
前回に引き続き日本高校バスケ界の変遷を紹介していきます。
今回は2010年以降から現在までのお話です。それまでは今でも日本のバスケ界で活躍する田臥、竹内兄弟、比江島、並里などといった選手が歴史をつくったきましたが、この時代あたりから留学生を擁するチームが目立った結果を出してきます。しかしその中でも必ずキーになる日本人選手が各世代を引っ張ってきました。
2010年以降のウインターカップとIHの上位校は以下のとおりです。

■ 三冠達成の延岡学園とミラクルチーム尽誠学園(2011-2012)
2011年、現在もBリーグ渋谷で活躍するベンドラメ礼生と留学生を主体にした宮崎の延岡学園が、1998年の能代以来の三冠(IH、国体、ウインターカップを制覇)を達成します。優勝候補の筆頭だった延岡学園の決勝の相手は香川の尽誠学園。無名というほどではないものの、それまで全国ベスト8やベスト4にはならないような高校が後に日本人2人目のNBA選手となる渡邊雄太を中心に下剋上を続けて勝ち上がりました。「少し細いけど背が高い(当時は192cmくらいで今は203cm)、腕も長い、シュートもうまい、サウスポー。これは!!!」また新しいタイプの日本人選手の出現に我々ファンは歓喜(当時はさすがにここまでの選手になるとは想像できませんでしたが)
2012年のウインターカップ決勝も延岡と尽誠の同カードとなり、決勝はどちらも延岡学園の勝利となりました。

ちなみに当時の尽誠学園で渡邊雄太と同級生の楠元が、現在対戦相手だった延岡学園のコーチをしています。因果を感じますね。

■ 「すっごい楽しいバスケ」でウインターカップ3連覇を達成した八村塁劇場(2013-2015)
田臥勇太時代の最強能代を最も苦しめたチームはどこか?ということがファンの間で話題になることがあるのですが、その話題の時に必ず出てくる高校の1つが宮城県の仙台高校です。田臥勇太の3年間の公式戦で唯一の土をつけた高校でもありますし、志村雄彦(現仙台89ers社長)も2学年下ながら田臥勇太とのマッチアップは見事なものでした。その仙台高校を長年率いた佐藤久夫コーチが赴任した明成高校が少し前から宮城県そして全国の強豪校となっていたのですが、そこに八村塁という日本バスケ史上最高の逸材が入学したのです。
八村世代は現在Bリーグに入って間もない世代で、若いながらも活躍するライバルたちも多く(福大大濠の牧(現B琉球)、増田(現B川崎)、土浦日大の平岩(現B東京)、松脇(現B富山)、杉本(現日大)、藤枝明成の角野(現B大阪)など)いましたが、やはりその中心は八村塁。1年から3年までウインターカップで3連覇したのは、田臥の能代、比江島の洛南以来のことになりました。

また、彼には当時からスター性があり、
1年時の優勝インタビューでは「バスケは楽しいです。」
2年時には「バスケはすっごい楽しいです。」
そして3年時には「バスケはすっごい、すっごい楽しいです。」
と答え、見事な三段コンボを決めてアメリカのゴンザカ大学に旅立っていくのでした。

■ 明成と福岡第一の龍虎時代(2016-)
八村塁のウインターカップ3連覇時代(2013−)から先日2020年の8大会ではウインターカップで優勝したのは明成と福岡第一の2校だけです。2強というほど戦力は偏ってはいないものの、過去8年のうち5回の優勝をした明成と3回の優勝をした福岡第一は現在特別な2校です。明成は留学生こそいないのですが八村塁の影響もあって体格、身体能力の高いハーフの選手が多く、2017年には弟の八村阿蓮(現東海大)や相原アレクサンダー学(現青山学院大)を中心に、先日の2020年大会では山崎一渉など2m級の動ける選手を揃えて見事優勝を果たしています。山崎一渉をはじめ主力の多くがまだ2年生で、しかも同じく2年生で山崎と並ぶ主力の菅野ブルースは怪我で2020年は欠場していたので、2021年も明成が本命の一角であることは間違いありません。
また、いまBリーグを騒がせている河村勇輝(現東海大)も1年生からスタメンとなり2年時と3年時(2018,2019)に見事ウインターカップ連覇を果たしました。特に河村が3年時の福岡第一は他を寄せ付けず、天皇杯ではB3のチームに勝利するなど大きな話題になりました。

また、東山の岡田(現B富山)、桜丘の富永(現ネブラスカ大内定)、北陸学園の大倉(現東海大)、福大大濠の井上(現筑波大)、福岡第一の松崎(現東海大)、など多くの未来明るいタレントも現在日本で、世界で活躍しています。これから渡邊雄太、八村塁を中心とした日本代表に食い込んでくる選手も出てくることでしょう。

■ 2020年は好ゲームの連続で明成が優勝
今年はIHも中止、対外試合がほとんどなかったこともあって予測が立てづらく、いつも以上にどこが勝つかわからない、それを示す良い大会となりました。
河村が卒業しハーパーJrを中心に3連覇を狙う福岡第一
前大会準優勝も最近しばらく福岡2番手となっている福大大濠の雪辱か
優勝の本命とされるも、予選で同じく京都の名門洛南に負けた東山の本領発揮か
今年が勝負の年だったところに、テーブス流河が加わった報徳学園
富樫勇樹の父が監督となり近年一気に強豪となった開志国際
能代を除くと最も古豪にも関わらず未だに強豪、安定的な結果を出す北陸
八村2世と騒がれる山崎一渉を中心としたビックチーム、明成
ざっくりこんな下馬評でしたが、決勝は明成と東山、最後までどちらが勝つかわからない好ゲームで見事明成の優勝で幕を閉じました。

■ (おまけ)2021年以降の高校バスケの展望
今まで見てきたように田臥勇太以降の日本高校バスケは能代工業(秋田)、洛南(京都)、北陸(福井)、福大大濠(福岡)、延岡学園(宮崎)、福岡第一(福岡)、明成(宮城)を中心に発展してきました。そして近年は桜丘(愛知)、中部第一(愛知)、東山(京都)、報徳学園(兵庫)、開志国際(新潟)なども台頭してきています。前述の通り現在は明成と福岡第一の2校が中心ですが、戦力は毎年変わるので今後どの高校が時代を築くのかは正直わかりません。

ちなみに、上記に挙げた12校のうち今のところ留学生を受け入れていないのは、能代工業(来年からは能代科学技術高校)、洛南、福大大濠、明成の4校のみ。現状上位常連校と呼べるのは能代を除く3校だけです。そしてこの3校も留学生はいないとはいえ身体能力的に遜色ないハーフの選手や2m級の日本人選手を揃え、留学生対策をしっかりとして大会に臨んでいる印象です。今後更に留学生の採用が強豪校の宿命となっていくのか、それに抗うチームは生き残れるのか、今後の楽しみの1つです。

そして、バスケット自体の質も上がっており、Bリーグもあるので、昨年の河村勇輝にはじまり、東山の米須や福岡第一のハーパーなど高校生でも世代を代表する選手はウインターカップ後にBリーグ特別指定選手としてプロのチームで活動するのもスタンダードになっていくでしょう。これも日本バスケ界にとってはすごく良いことだと思います。

また、高校バスケで結果を残した選手の多くは次のカテゴリーである大学バスケに進みます。高校時代はライバルだった選手が同じチームになったり、その逆もあります。そうやって大学バスケを追っていき、いずれはBリーグやNBAで活躍する姿を応援していくのもファンの大きな楽しみです。

というわけで、変遷の紹介は以上になります。
少しでも興味も持っていただいたり、過去を懐かしんでいただけたら幸いです。
そしてこのシリーズ高校バスケシリーズ、次は今までの成績を元に最強高校ランキングをつくってみたいと思います。